自分でビジネスを開業する際の形態はそれぞれあり個人事業主か法人を選ぶかによってもそれぞれルールや納める税金の料率などが変わってきます。
巷ではよく『起業しよう』と書籍やセミナーがよくありますがその際どのような形態をとれば自分自身にとって一番よいのかわからないことも多く、必ずしも株式会社にする必要もありません。
今回は個人事業主と法人【株式会社】について法的な違いや納税にかかる基本知識とメリット・デメリットについてお話をしていきます。
Contents
設立の費用と手間
◯個人事業主
費用と手間で比較するのであれば、個人事業主のほうがどちらもかかりません。
個人事業主の場合、手続きは税務署へ開業届を提出するだけです。定款作成も必要ありません。
※仮に開業届を提出しなくても、確定申告の際に提出する申告書類に事業収入の記載があれば自動的に個人事業主となります。
↓開業届イメージ
↓確定申告イメージ
◯法人【株式会社】
株式会社を設立する場合は約24万円~30万円が必要となります。
登録免許税 | 150,000円~ ※資本金の額×0.7% (上記の税率で15万円に満たない場合は申告件数1件につき15万円) |
認証手数料 | 50,000円 |
収入印紙代 | 40,000円 ※電子定款を利用する場合は無料 |
謄本手数料 | 2,000円 |
また、公証人役場へ定款の承認を得る必要があります。
税金
一概にどちらのほうがとひゃ言えませんが、個人事業主と法人それぞれにかかる税金を比較した場合、売上が800-1000万を超えた時に法人格にしたほうが節税対策になるでしょう。
◯個人事業主
- 所得税
- 住民税
- 消費税
- 個人事業税
1・所得税
1年間の『所得』に対して課税される税金です。『所得』とは1年間の『売上』から必要経費や所得控除を差し引いたものになります。個人事業主の所得税は累進課税(所得が増えれば税率が上がる制度)となっており、経費として計上できる範囲も法人と比べて狭いです。
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円~330万円 | 10% |
330万円~695万円 | 20% |
695万円~900万円 | 23% |
900万円~1800万円 | 33% |
1800万円~4000万円 | 40% |
4000万円~ | 45% |
2・住民税
住民税は都道府県と市町村に納める税金です。
住民税の算出方法は均等割と所得割を合計したもので、それぞれの地域で納税金額や税率が異なりますがおおよそ均等割は5000円前後、所得割は【課税総所得金額】の10%程度となっています。
3・消費税
開業してから2年間は納税する必要はありません。また年間売上が1000万円以下の場合もかかりません。
年間の売上げの中に含まれる受け取った消費税から、経費や諸費用で支払った消費税分を差し引いた額を納税します。
4・個人事業税
個人事業税の納期時期は8月と11月です。
事業主控除金額は290万円です。年間の事業所得がこの金額以下の場合は個人事業税はかかりません。
税率は業種によって異なりますがおおむね3~5%です。殆どの業種で5%となります。
◯法人【株式会社】
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税
※配当金による売上がある場合は「所得税」や、「固定資産税」「自動車関連税」などもある。
法人税
法人の所得に対して課せられる税金です。
課税対象所得金額 | 税率 |
800万円以下 | 15% |
800万円以上 | 23.90% |
法人住民税
法人住民税は会社を登記している都道府県・市町村に納める税金です。
またそれぞれ法人税割と均等割があり都道府県・市町村にごとに定められています。
均等割については資本金の額、従業員数によって変わってきます。
例・事業所の所在地が東京23区にあり資本金1000万円以下の場合→法人住民税の均等割は7万円となります。
また、法人税割の標準税率は12.9%~17.3%となっています。
法人事業税
法人事業税は、都道府県から法人が事業を営んでいることで応分に課せられる税金です。税額算出方法は
となります。なので所得がなければ(赤字であれば)法人事業税はゼロとなります。また、税金ではありますが損金算入ができますので費用として計上することができます。
所得区分 | 税率 |
年400万円以下の所得 | 3.4% |
年400万円を超え年800万円以下の所得 | 5.1% |
年800万円を超える所得 | 6.7% |
消費税
会社が預かった税金を国に納付する消費税。現在の税率はみなさんご存知の通り8%です。(2018年3月現在)
出資金が1000万円以下の場合は創業して2年間は納税が免除されます。また、年間の売上高が1000万円以下の場合も免除となります。
経費計上できるもの
個人事業主よりも法人【株式会社】の方が経費計上できるものの範囲が広いです。
基本的に事業に関係するものであれば経費計上でき節税対策が可能です。
◯個人事業主
- 消耗品費
- 旅費交通費
- 接待交際費
- 水道光熱費
- その他
◯法人【株式会社】
法人は基本的に上記の全ての経費を計上できます。それとプラスアルファで以下の経費も計上できます。
- 給料
- 保険料
- 住宅費
- 日当
欠損金の繰越控除
年間の売上が赤字となった場合は、それを翌年に繰り越すことができます。
損失を繰り越すことにより、翌年黒字だったとしても課税所得額を抑えることができます。
個人事業主の場合は3年、法人【株式会社】の場合は9年間繰越することが出来ます。
まとめ
個人事業主か法人どちらかでビジネスをスタートするかは業界や業種、規模などより一概にどちらがいいかは言えませんが、年間売上額が概ね800-1000万円を超えれば法人【株式会社】に法人成りするのもありでしょう。
また、しっかりと売上の見込みが立っていないのに最初から法人【株式会社】を設立することは赤字でも法人住民税が必ずかかりますし、設立にお金もかかりますのでリスクがあると言えます。
ビジネスとして成り立つかどうか見極めながら賢く仕組みを活用しましょう。